猫の感染症の一つである、クリプトコッカス症ってご存知でしょうか?
これは真菌(カビ)を吸いこむことで発症し、人や犬にも感染が広がってしまう人畜共通感染症です。
病気などで免疫力が落ちた時に発症しやすく、現れる症状は様々です。
症状を見てもすぐに分かりにくいため、ある程度進行するまで気付かないこともあります。
少しでも早く気付けるためには、クリプトコッカス症について知っておくのが良いでしょう。
そこでここでは、クリプトコッカス症について説明していきます。
クリプトコッカス症は、どんな病気なの?
クリプトコッカスという真菌(カビ)が原因の感染症です。
この感染症は人畜共通感染症で、人や犬にも感染します。
特に、体力が落ちていたり免疫力が弱っている場合に、発症しやすくなるようです。
猫の場合、他の動物よりもクリプトコッカスに対する感受性が強いので、健康でも発症することがあります。
原因菌であるクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)と、クリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)は、どちらも真菌(カビ)です。
地面や植物、鳥の糞など、私たちを取り巻く環境のあちらこちらに存在しています。
クリプトコッカスには莢膜という硬い殻があり、乾燥にとても強く空気感染で広がっていきます。
クリプトコッカス・ネオフォルマンスの方は、鳥の糞の中で増える特徴があります。
そのため、鳥がいる場所にたくさん存在しています。
クリプトコッカスの大きさは、5ミクロン以下です。
とても小さくて目で見ることは出来ません。
細かい粒子として風で運ばれ、猫が吸いこむと感染します。
症状が出て来るまでには、数か月~数年かかるそうです。
発症するまでの期間がこんなに長いと、どこで感染したかなんて分からないですよね。
呼吸器だけでなく、血液に乗って全身を巡ることもあります。
鼻から吸い込む以外にも、怪我をした場所から感染したりもします。
クリプトコッカス症には、どんな症状があるの?
クリプトコッカス症の症状はたくさんあるので、一言では言えません。
症状が出る場所もたくさんあるのですが、主に鼻や脳に症状が出やすいようです。
どの症状も、決め手となる特徴がないのが特徴と言えるでしょう。
「何かおかしい」、「いつもとちょっと違う」など、飼い主さんの直感は早期発見に繋がることが多いです。
気になることがあったら、早めに獣医さんに相談してみましょう。
それでは、具体的な症状を挙げていきますね。
鼻の症状
猫の場合は、鼻に症状が出ることが多いです。
くしゃみをしたり、鼻水、鼻詰まりといった、鼻炎の症状が出て来ます。
くしゃみなどは、健康な猫でも何かの拍子に出たりしますし、ホコリなど吸いこんだ時は鼻水も出ちゃったりしますよね。しかも鼻の症状が出る病気は他にもありますから、見分けるのは結構難しいです。
進行していくと、鼻が腫れてきたり、しこりが出来たり、変形したりします。
このように、目で見て分かるようになってから気付くことが多いようです。
皮膚の症状
皮膚に症状が出る場合は膿瘍や潰瘍が出来て、膿でジュクジュクした感じになります。
しこりが出来たりもします。
鼻から吸い込んだり、血液で全身に広がった場合には、このような症状があちこちに出ます。
傷口から感染した場合は、1カ所だけのことが多いようです。
中枢神経の症状
クリプトコッカスの病巣が脳の中に出来た場合は、けいれんの発作が起きたり、突然目が見えなくなったりします。
また、いつもとは違う行動をするので、飼い主さんは違和感を覚えるでしょう。
肢が麻痺したり、運動失調の症状が出ることもあります。
鼻の症状から脳に広がって、中枢神経の症状として現れる場合が多いです。
脳に広がると、重い症状が出ることが多いです。
全身の症状
クリプトコッカスが血液に入り全身に広がってしまった場合、リンパ節や関節が腫れるなどの炎症があちこちで起こります。しこりが出来ることもあります。
どうやって診断するの?治療法は?
クリプトコッカス症の診断は、症状が出ている部分を採取し検査して行われます。
症状が出ている部分には菌がたくさん増殖しているのですが、脳の場合は採取が出来ません。
脳に症状があったり、血液で全身に広がった場合などは、脳脊髄液や血液で抗原検査をします。
どんな治療をするかというと、基本的には抗真菌薬の投薬となります。
ケトコナゾールやフルコナゾールを使い、クリプトコッカスが無くなるまで投薬を続けます。
そのため、治療期間は症状の進み具合によって変わってきます。
2ヵ月以上継続しなくてはいけない場合が多く、外科的に対処することもあるようです。
脳や全身に広がってしまうと、思うように治療が進まないことが多いようです。
どんな猫が発症しやすいの?
中枢神経への感染はシャム猫が多いとも言われていますが、どの猫種でもクリプトコッカス症を発症する可能性はあると思っておきましょう。
特に注意が必要なのは、体力や免疫力が落ちた猫です。
免疫抑制剤や抗がん剤の治療をしている猫、子猫や高齢猫は発症しやすいと言えます。
猫免疫不全ウイルス、猫白血病ウイルスに感染した猫も注意が必要です。
どうやって予防したら良いの?
クリプトコッカス症の予防法は、感染しないように気を付けることしかありません。
予防薬がないのです。
子猫や高齢猫、病気で治療中の猫などは、特に気を付けてくださいね。
クリプトコッカスは地面にいる可能性が高いので、完全室内飼育ならリスクがかなり低くなります。
ハトが保菌している場合もあるので、家の近くでハトにエサやりをするのは避けた方が良いでしょう。
最後に
猫のクリプトコッカス症の、症状や原因、治療法について書きましたがいかがでしたか?
クリプトコッカスという真菌を吸いこんだり、傷口から侵入されたりすることで感染します。
原因菌は地面や鳥が集まる場所に多く、実の周りに存在する菌なので予防するのが難しいです。
予防薬も無いので、室内で飼育するようにしたり、家の近くでハトの餌付けをしないといった対策が必要になります。
特に、体力や免疫力が低下している猫が発症しやすいので、病気を治療中の場合などは気を付けましょう。
子猫や高齢猫も発症しやすいので、室内で飼育していた方が安心でしょう。
鼻炎など、他の病気にもある症状が出るので分かりにくいです。
何か異変を感じたら、早めに動物病院に行くようにしましょう。
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