前回の第28回では、天皇が幕府に長州征伐を命じますが、海軍操練所を率いる勝海舟(遠藤憲一さん)は反対し、海軍を動かそうとしません。
慶喜(松田翔太さん)に命じられ、勝を説得する吉之助(鈴木亮平さん)。
しかし説得どころか、勝の「もう幕府なんざ見限るこった」という言葉に衝撃を受けます。
幕府軍の采配を任された吉之助は、長州の事情を探った上で、降伏を勧めます。
長州は恭順の意を示し、見事に戦わずして戦争を終わらせました。
しかし長州を叩き潰したかった慶喜は激怒。慶喜と吉之助は、袂を分かつことに…。
前回の第28回「勝と龍馬」を見逃した方は、是非こちらをどうぞ。
それでは、第29回「三度目の結婚」のあらすじと感想です。
吉之助の目指す国とは
吉之助は1年ぶりに薩摩に戻ります。禁門の変、長州征伐での活躍は薩摩にも伝わっていました。
薩摩藩主・島津茂久(長田成哉さん)と対面すると「おんしのことを耳にするたび、我がことのようにうれしく思うぞ」と吉之助を褒め讃えました。しかし国父である久光(青木崇高さん)は「大儀であった」と、しぶしぶの一言だけ。それでも吉之助は「光栄至極に存じます」と、丁寧に頭を下げました。
一蔵(瑛太さん)と2人で、かつてうなぎをとった川を眺めながら、吉之助は「もう幕府に、日本国を任せてはおけん。このままじゃ異国ではなく、幕府に滅ぼされる」と、実は長州征伐は、長州と薩摩を戦わせて弱体化を図ろうという慶喜の作戦なのだと打ち明けました。
驚く一蔵ですが、「幕府が守りたいのは、徳川家だけっちゅうことか」と納得します。
吉之助は「そげな幕府なら潰すしかなか」「日本を変えるなら薩摩を変えねばならん。オハンの力を貸してくれ」と協力を求めますが、一蔵はさすがに幕府を倒そうとまでは殿も考えていないのだと言って「オイはついていけもはん」と拒否。
吉之助は「じゃっとん仕方なか。オイは1人でやる」と言って、川に入って子供たちと一緒にうなぎ取りを始めます。その吉之助の姿を、橋の上から糸(黒木華さん)が眺めていました。
吉之助の嫁取り
その夜、大山格之助(北村有起哉さん)や海江田武次(高橋光臣さん)が西郷家に集まり、吉之助の出世を祝う宴会が開かれました。西郷家の留守を預かる弟・吉次郎(渡部豪太さん)は結婚し、嫁の園(柏木由紀さん)のお腹には赤ちゃんがいました。実家に帰ってきている妹の琴(桜庭ななみさん)が突然、吉之助に「兄さは嫁を取ってくいやんせ」とお願いします。仲間たちも賛同し、吉之助のお見合い相手を募集することになりました。「そいどころじゃなか」と戸惑う吉之助をおいて、皆は嫁探しに盛り上がります。
明くる日、吉之助の嫁を大々的に募集。薩摩の英雄と結婚したい若い女性たちが家の前に集まって、長蛇の列ができました。そこに懐かしい顔が。沖永良部島の流人・川口雪篷(石橋蓮司さん)が、罪を許され薩摩に戻ってきたのです。雪篷は図々しくも西郷家の世話になりたいと言い出し、吉之助も快く歓迎。雪篷は集まった女性たちを追い返してしまいました。
吉二郎と琴は、なぜ嫁を取らないのかと吉之助を責めます。吉之助は「島に妻と子がおる」と言います。島妻・愛加那と子・菊次郎、菊草のことがあるので、薩摩で結婚する気がないのです。しかし吉二郎は「ご先祖様に申し訳がたちもはん」「一日も早く嫁を取って、西郷家に跡取りを。お願いしもす!」と、さらに頭を下げます。
幕府と長州
明くる日、吉之助は城に呼ばれました。薩摩藩に参勤交代の命が出たのです。3年前、久光が幕府に交渉して参勤交代は廃止になったのですが、幕府は再開を命じたのでした。久光は「わしには分かっちょうぞ。先頃の戦であまりに容易く長州をねじ伏せたもんじゃから、幕府は思い上がっちょっとじゃ」「それはつまり西郷、おまえのせいじゃ!」と怒鳴り、吉之助に言いがかりをつけてきたのです。吉之助は言い返すこともせず「仰せのとおりにございます」「あのときすぐに使いを出して、国父様のお指図を仰いでおればこげんこつにはならなかったかも知れもはん。お許しくださいませ」と頭を下げて涙を流しました。その意外な反応に、久光は「おまえ泣いちょ?」と、かなり興奮が冷めた様子。一蔵に「すぐに京に行って、こん男の尻拭いをしてやれ」と、参勤交代の取りやめを働きかけるよう命じました。
部屋を出たあと、隠れてコソコソと話す2人。なぜ久光のご機嫌取りのような真似をしたのかと一蔵が聞くと、吉之助は「近く、一橋様は再び長州を征伐するに違いなか」「薩摩は長州の味方につく」と言うのです。散々考えて出した結論だと言います。「そのためには国父のお気持ちを動かさねばなりもはん。そのためなら媚も売る、謀もする、偽りの涙も流す」と、吉之助の決意は固く、再び一蔵に協力を求めますが、再び拒否されてしまいます。
一蔵が帰宅すると、吉之助の妹・琴が訪ねてきていました。嫁を取らない吉之助を説得するよう一蔵に頼みますが「嫁を選ぶ暇などなか」と、そっけない態度。しかし琴が帰ったあと、ふと思い出して糸という女性のことを調べるよう、妻の満寿(美村里江さん)に頼みました。何か、ピンときた様子の満寿。
しばらくして満寿は、糸の父・岩山直温(塩野谷正幸さん)と糸を連れて、西郷家を訪れました。吉之助の出世を祝うため、お酒や鯛を持ってきたのです。部屋で宴会となり、糸との昔話で盛り上がります。そして、糸は一度結婚したものの、離縁されて実家に戻っていることが分かりました。初めの結婚で嫁に逃げられた吉二郎とはお似合いだと、周りが盛り上がります。しかし、糸は浮かない顔です。
そのとき園が急に苦しみだしました。なんと陣痛が始まったのです。糸の早足で産婆を呼び、何とか出産に間に合いました。無事に生まれ、ほっとする一同。やはり吉之助と糸はお似合いだと盛り上がり、糸の父親も「西郷様さえよければ、糸をもらってくれやせ」と頭を下げます。しかし糸は「西郷様の妻にはふさわしくなか。私が離縁されたのは、子ができんかったからです」と正直に話し、部屋を出ていってしまいました。
その夜、吉之助は寝付けず、寝床で横になりながら貝殻を握ります。それは愛加那、菊次郎、菊草との思い出の貝殻でした。
糸へのプロポーズ
次の日、吉之助は糸の実家を訪ねました。出戻りの糸は、兄嫁から冷遇され、肩身が狭い思いをしています。吉之助を部屋に通し2人きりになると、しばらく沈黙が続きます。吉之助が話を切り出し、「寄ってたかっておいに嫁を取らせようとしちょう。じゃっどん、おいの妻になる人は気の毒じゃ。おいはまたすぐ京に行かねばならん。いつ薩摩の家に戻ってこれるか分かりもはん」と説明しました。糸は「立派だと思います」と答えます。そして吉之助は「糸ささえよければ、あの家にきてくれもはんか」と、結婚を申し込みました。子ができずに離縁したことも「それは天に任せよう」と、優しく笑います。
吉之助は「オイにはおなごを哀れんだり、おなごに惚れたりしちょる暇は無か。糸どんじゃって言うが、オイは今、とんでもなかこつをしようちしちょう」「オイはの、民のための国ちゅうもんを作りたか」と、密かな決意を糸に語りました。しかし糸は「すみもはん」と結婚を断ってしまいます。吉之助は優しく「無理を言うたな」と、立ち去りました。
吉之助は家に戻り、家族に「すまん、糸どんに断られてしもうた」と報告。なんと言って申し込んだのかと聞かれ「惚れる暇は無かどん、家のものが喜ぶちゅうことで」と答えると、雪篷は「そんな事を言えば断るに決まってる」と笑い、園は「嘘でも、おなごは惚れた言って欲しいんですよ」と言って、皆が呆れます。琴も「もうよか!」と怒り、熊吉も「はーあ!」と深い溜め息をつきました。
そして吉之助が京に旅立つ日がやってきました。
糸の父は「今度はおはんが決めたらよか。糸、もう二度と会えんかも知れんぞ」と、糸を促します。糸は決意し、西郷家に走りました。
しかし熊吉に旅立ったあとだと言われ、吉之助を追ってまた走ります。かつて吉之助とすれ違った、思い出のあの橋で追いつくことができました。
糸は「あん家でお帰りを待っちょります。西郷吉之助の妻として、新しか国を一緒に見たか。ふつつか者じゃっと、よろしくお願いいたしもす」と、結婚を承諾しました。
吉之助は「ありがとな、糸どん。ほなら行ってくるな」と、笑顔で京へと旅立って行きました。
やっと追いついた琴と熊吉も「糸さ、よかったな!」と大歓迎。こうして吉之助は三度目の結婚をすることになりました。
次回、第30回は「怪人 岩倉具視」。
笑福亭鶴瓶さん演じる、岩倉具視が本格的に登場します。
京に着いた吉之助は、岩倉にお庭方を命じられます。
まるで忍者の罠にかかったように、宮中に網で吊るされる吉之助。
ニンマリと笑う岩倉…一体何が起こるのでしょうか?
そして慶喜、つまり幕府と決裂した吉之助が今後どう動くのか注目です。
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