第5回「雨ニモマケズ」、明治44年に行われたオリンピック予選大会。
飛び入り参加した三島弥彦(生田斗真さん)は、短距離走でぶっちぎりの1位に。
そしてマラソン、四三(中村勘九郎さん)は最下位グループからスタートして徐々に順位を上げ、最後は世界新記録で1位に。足袋の改良が課題となります。
一方、美濃部孝蔵(森山未來さん)は、憧れの橘屋圓喬(松尾スズキさん)への弟子入りを果たしました。
明治のオリンピック噺と、若かりし志ん生こと美濃部孝蔵、そして昭和35年の志ん生(ビートたけしさん)の語りが絶妙に場面展開されながら、ドラマは突き進んでいきます。
前回の第5回「雨ニモマケズ」を見逃した方は、是非こちらをどうぞ。
それでは、第6回「お江戸日本橋」のあらすじと感想です。
オリンピック代表選出
四三は播磨屋の店主(ピエール瀧さん)に「先日はすみませんでした!」と深々と頭を下げます。主人はこちらをジロリと見たあと「履いてみな」と一組の足袋を投げて寄越しました。底が3枚重ねで、丈夫になっています。四三は「ああ…良かです!ありがとうございます!」と、軽やかに走りだしました。
嘉納(役所広司さん)の執務室に、体育学士の大森兵蔵(竹野内豊さん)とその妻・安仁子(シャーロット・ケイト・フォックスさん)、永井教官(杉本哲太さん)と可児助教授(古舘寛治さん)、他2人が集められ、オリンピック候補者について話し合います。候補は、金栗、井出、佐々木、三島、明石。問題は費用です。1人千円、5人で計5千円は、可児の給料7~8年分に相当する大金でした。
予算を管理する可児は、何人だったら連れていけるかとの問いに、難しい顔で1本指を出しました。永井教官が「1人か」とつぶやくと、嘉納は「わかった。では三島くんには自費で行ってもらおう」と、四三と三島弥彦の2人が代表に決定します。
すぐさま四三が呼び出されました。嘉納は「晴れて日本代表として、ストックホルム大会に金栗四三君を派遣することが決まったぞ」と伝え、皆が拍手します。「行ってくれるか」と言われると、四三は「行きとうなかです」ときっぱり断ります。よく聞くと、四三は「10里の道ばオイが走れるか、日頃の鍛錬ば試そうと思って…」と、オリンピック予選だとは知らず、さらにオリンピックが何なのかも分かっていませんでした。皆が説明しますが、四三はどう解釈したのか「負けたら切腹ですか」と青ざめ「それだけはお許しください!」と土下座します。
方や、三島弥彦。嘉納が三島家を訪問してエントリーシートを渡しますが、「私はストックホルムへは行きません」と、きっぱりと断られてしまいます。
自費で参加
そんなタイミングで、清国で辛亥革命が起こりました。東京高師には嘉納が自費で招いた留学生が大勢いましたが、国に帰りたいと騒ぎ出します。嘉納は「戻ってはならん」と説得。学費の話になると、嘉納は「外務省に交渉しよう、それでもダメなら全額負担する!」と言い切りました。この説得で100名を越える留学生が日本に留まりましたが、嘉納は数億を超える借金を抱えることになります。
嘉納が肘をついて呆けていると、校長室に四三が「失礼します!」と入ってきました。四三は優勝カップを返しに来たのです。嘉納は時を置いて冷静になったのか、金欠で力が出ないのか「負けても、切腹はせんでいい。最善を尽くしてくれればいいんだ」と、穏やかな口調で語りかけます。「誰かが捨て石となり、礎にならなければ、次の機会は4年後だ。金栗君、日本のスポーツ界の黎明の鐘となってくれたまえ」と頭を下げました。
心を動かされた四三は「行きます。金栗は行きます!」と、涙と鼻水を流しながら了承します。そして嘉納は渡航費を自分で出すように提案。それならば勝つも負けるも自分の勝手なのからと言いくるめると、四三は「はい!」と返事をしました。
四三は約1年ぶりに、実家に手紙を出します。ストックホルム滞在は5ヶ月、どんなに切り詰めても1800円かかる計算です。オリンピック予選とは知らず、世界記録を出したこと。嘉納先生の口車に乗せられ、大金が必要なこと。包み隠さず手紙に書きました。
富久
圓喬は上野、浅草、人形町、日本橋と、1日に4つの寄席を回るほどの売れっ子でした。美濃部が押す人力車に乗った圓喬が『富久』の稽古をはじめます。孝蔵が聞き入って足を止めると「耳で覚えちゃダメだよ、噺はね、足で覚えるんだ」と教えます。
そして昭和35年。志ん生は自宅に戻ると、弟子の五りん(神木隆之介さん)に「小噺の1つでも教えようか」と言いますが、五りんは「そういうのはいいんです、僕。僕が知りたいのはドキュメントなんです。親父とお袋が、どうやって知り合って僕が生まれたのか」と言います。
志ん生は『富久』の稽古をつけてくれました。しかし五りんとその彼女の知恵(川栄李奈さん)はよく分からずポカーン…。「おかしいな」と言いながら五りんが『志ん生の富久は絶品』と書かれた葉書を取り出すと、「圓生じゃねえのか?オレは満州で富久やった覚えはねえもんな」と言い出します。葉書に書かれているのは、『志』『え』どちらなのでしょうか…。
また明治に戻り…播磨屋で四三と清さん(峯田和伸さん)が顔を合わせます。清さんがストックホルムの様子を聞くと、石畳がある水の都なのだと、永井教官から聞いたことを伝えました。それなら練習コースは、浅草から人形町を通って日本橋に、さらに芝まで抜けるといいだろうと教えてくれます。
すれ違う日本橋
また昭和35年、田端政治(阿部サダヲさん)らが乗るタクシーが日本橋で渋滞に捕まります。首都高建設中でまだ空が見える日本橋が、CGで再現されていました。田端政治は「もとの富久は浅草から日本橋を行って来いする話なんだ。ところが志ん生が勝手にアレンジしてね」と、ラジオを聞きながらつぶやきます。その横を、スッスッハッハッと通り過ぎる男が。運転手が驚いて、「いたんですよ、芝にもさっき。足袋で走ってるおとっつあん!」と声を上げると、田端は「うるせえな、落語じゃあるめえし、芝から日本橋まで走るバカがどこにいる!」と、怒ります。
志ん生が「いたんですね、走るバカが」とナレーションして、暗くなっても走り続ける四三の姿が。ストックホルムに向けて練習する四三と、空の人力車を引っ張る孝蔵が、日本橋の真ん中ですれ違います。ちょうど花火が上がり、四三と孝蔵の顔を照らしました。
過去と未来で、四三が運命の人と日本橋ですれ違う演出。四三が日本橋を超えて芝まで走るのが、志ん生が芝にアレンジしたことにかけている、びっくりな落ちでした。
次回、第7回「おかしな二人」。
嘉納の口車にのせられた四三は、実家に資金援助の手紙を出しました。
大森は「金があるのに行けない三島と、行けるのに金がない金栗かあ」と、つぶやきます。
四三と弥彦は、無事にストックホルムに行くことができるのでしょうか?『おかしな2人』とは、1960年台に発表されたアメリカのコメディー映画。
このキーワードがどんな落ちにつながってくるのか、そちらも楽しみです。
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