前回の第27回「替り目」は、孝蔵(森山未來さん)の貧乏話から始まりました。
破門されて産婆代も払えないほど貧乏でしたが、おりん(夏帆さん)は3人目の子供を産みます。
田畑政治(阿部サダヲさん)は金メダル必勝プランとして、監督を早期に決定し、世界水準のプールを建設、さらに日米対抗戦を実現させようと奔走します。
その頃、熊本の兄が亡くなり、四三(中村勘九郎さん)は故郷に帰ることに。嘉納(役所広司さん)に最後の挨拶をし、表舞台から去ります。
前回の第27回「替り目」を見逃した方は、是非こちらをどうぞ。
それでは、第28回「走れ大地を」のあらすじと感想です。
日米対抗水泳大会
昭和6年8月7日、日米対抗水泳大会が開かれました。結果は40-23と日本の大勝利で終わります。遠征してきたアメリカは2割不利だったこと、アメリカが途中からオリンピック種目だけに実力者を投入する作戦に切り替えたという理由で、政治は満足していませんでした。
100m自由形の1位はアメリカ、2位は14歳の新鋭・宮崎康二(西山潤さん)、3位が前回銀メダルの高石勝男(斎藤工さん)。平泳ぎは、金メダリストの鶴田(大東駿介さん)が16歳の小池礼三(前田旺志郎さん)に破れ、2位です。女子平泳ぎで活躍したのは前畑秀子(上白石萌歌さん)でした。日米対抗戦は、興業的にも大成功に終わります。
政治は、銀座にある体協本部に招かれます。嘉納と野口(永山絢斗さん)は、政治に理事になるよう持ちかけますが、政治は即時に断り「偉そうに髭生やしてシルクハットかぶって、開会式と閉会式だけ出て…」と批判します。怒った嘉納が「髭は生やさんでいい!」と怒鳴りつけて、政治を強引に東京市庁舎につれていきました。そこで、紀元2600年事業で東京へオリンピックを誘致する計画を話します。関東大震災から7年、東京市長の永田(イッセー尾形さん)は「立ち直った日本をね、私はね…世界に見せたいんだ」と語り、嘉納が「まさに平和の祭典!」と賛同。壮大な計画に、政治は驚きます。
満州事変
ところが、出鼻をくじく大事件が起こります。南満州鉄道の線路が、何者かによって爆破されました。満州事変です。
昭和36年、五りん(神木隆之介さん)が満州事変について質問すると、志ん生(ビートたけしさん)は「売られたケンカだ、中国やっつけて満州まで占領しようってな」と、当時の国民の見識を答えました。戦後は関東軍の自作自演だという真実が報道されますが、当時の新聞は日本に都合の良い記事しか載せることしかできませんでした。
昭和6年、朝日新聞社。このまま戦争に突入かと不穏な空気の中、政治1人だけがオリンピック応援歌募集の記事に興奮し、先輩に「こんな時に不謹慎だぞ」と、叱られます。
その晩、政治は校閲部の河野(桐谷健太さん)とバーにいました。河野は満州事変が関東軍の自作自演だと説明し、「日本は国際社会で孤立する。オリンピックどころの騒ぎじゃなくなるぞ」と忠告し、「新聞なんて無力だ」と退職して代議士になることを告げました。新聞記者を続ける政治に「特ダネの1つもとってきたらどうだ」と、焚き付けます。
やる気になった政治は、またも高橋是清(萩原健一さん)の家に向かいました。「で、何かないですかね、特ダネ」と、のん気に聞く政治に、高橋は「君は政治部の記者には向いていない。ただ、悪運は強いようだ」と、満州事変の責任を取って内閣が総辞職し、犬養毅(塩見三省さん)が次の総理に指名されることを教えてくれました。政治は急いで新聞社に電話、スクープを取ります。
上司の緒方(リリー・フランキーさん)がお見合い写真を渡しますが、政治は「それどころじゃないんですよねー」と、写真を放り投げてしまいます。河野は代議士になるために退職。政治に「スポーツが盛んなうちは、国は大丈夫だ。オレは政治をやる。お前はこの国のスポーツを頼む」と言って、社を去って行きました。
選手選考
昭和7年3月、関東軍は満州を占領し満州国を立ち上げました。しかし日本政府は了承せず、軍部は苛立ちます。犬養総理は関東軍のやり方に反対し、取材にきた政治に「スポーツはいいな。戦争は勝つ方も負ける方も辛く、苦しい。だがスポーツは勝っても負けても清々しいものだ」と、語りました。政治は社に戻り、原稿を速記係の女性に口述筆記してもらいます。女性の名は酒井菊枝(麻生久美子さん)。実は、緒方が持ちかけたお見合いの相手でした。
一方、東洋一のプールと言われた神田YMCAで、ロサンゼルスオリンピックの選手選考が行われました。普段は、現代の女子用スクール水着のように上半身も覆うタイプの水着を着ている男子選手ですが、衛生上難有りとされ、素っ裸で泳いでいました。高石は仕事がない日だけ参加、鶴田は「金メダルなど1つでたくさんじゃ。メダリストだからっていい気になっちょったら、一生飯が食えんくなるからな」と、満州鉄道への就職を決めてしまいました。事実上の引退です。「ピークをすぎた選手を見捨てず、勝利に導く。それが真の指導者だ」という方針のカクさん(皆川猿時さん)と、金メダル至上主義の田畑政治は対立します。
そして女子。女子はさすがに水着を着て練習しました。期待の前畑は、スランプになってしまいます。死んだ両親が毎晩枕元に立ち、プレッシャーに押しつぶされそうです。カクさんは精一杯フォローします。そこにちょうど、満州から練習相手として呼び戻された鶴田がやってきました。前畑は、男前な鶴田に夢中になり、カクさんの言葉が耳に入りません。
その隣の部屋で、政治は高石に、試合には出さないがロスに行ってメダルを取れる選手を束ねて欲しいと言います。高石は憤慨し、「オレは抜ける」と出ていってしまい、カクさんが慌てて追いかけました。高石はプールサイドをイライラしながら歩き回ります。タバコを吸おうとしてカクさんに止められ、地の関西弁で「そもそも田畑さんて何なの!?指導者でっか?ストップウォッチ片手にウロウロしくさって。泳いどるとこ、いっぺんも見たことない!ホンマは泳げんのとちゃいますか?」と、怒鳴りました。「たとえ泳げなくても、それを補ってあまりある魅力がある!」とカクさんは一生懸命フォローします。
五・一五事件
オリンピック応援歌が「走れ大地を」という作品に決定、昭和7年5月15日にお披露目されました。同じ日、犬養首相の家に暴漢が侵入します。若い将校たちのクーデターでした。「まあまて、話せば分かる」という犬養を取り囲んで銃を発射し、将校たちはすぐに引き上げます。頭を撃ち抜かれたものの即死は免れた犬養でしたが、深夜午後11時26分に息を引き取りました。この事件後、日本は軍部独裁政治を歩み始めます。
新聞には軍からの圧力がかかり、まるで軍の広報でした。そんな中、田畑政治は水泳総監督として念願のオリンピックに参加、ロサンゼルスへ向かいます。
次回は、第29回「夢のカリフォルニア」です。
ロサンゼルスに到着した日本選手団ですが、満州事変などの影響で日本は世界から孤立しており、日本人は冷遇されます。
さらに有色人種への差別もひどいものでした。そんな中、試合には出さないと言われながらも現地に連れてこられた高石は、「何がノンプレイングキャプテンや!」と憤ります。
政治の強引な勝利至上主義は、果たして実を結ぶのでしょうか?次回も楽しみです。
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