第2回、いよいよ金栗四三(中村勘九郎さん)の青春が始まりました。
また、古今亭志ん生(ビートたけしさん)の落語との出会いも描かれます。
金栗四三は明治24年、後の古今亭志ん生こと美濃部孝蔵は明治23年生まれ。熊本に生まれた四三は、2歳までは病弱でしたが、やがて学校に走って通学するほど丈夫に育ちます。
海軍兵学校を目指しますが、目の検査で不合格に。一方、不良青年になった孝蔵(森山未來さん)は、名人・橘家圓喬(松尾スズキさん)の落語を聞いて心を動かされました。
前回の第2回「坊っちゃん」を見逃した方は、是非こちらをどうぞ。
それでは、第3回「坊っちゃん」のあらすじと感想です。
四三、東京へ
昭和35年。志ん生はあの青年を弟子にとって“五りん”と名付けました。妻のおりん(池波志乃さん)も、長女の美津子(小泉今日子さん)も、兄弟子の今松(荒川良々さん)すらも聞いておらず、驚きます。五りん(神木隆之介さん)は父の言いつけだからと、庭で冷水を浴びます。
遡ること50年前、我らが金栗四三も冷水を浴びて「ひょーーー!」と奇声を上げていました。海軍兵学校に落ちた四三ですが、兄・実次(中村獅童さん)に、嘉納治五郎(役所広司さん)が校長を務める東京師範学校に行きたいと打ち明けます。兄は「とつけむにゃあ!乃木将軍になる夢ば絶たれたばってん、嘉納治五郎を乗り越えるたあ、とつけむにゃあ男たい!」と、賛成してくれました。
努力の甲斐あり、四三は東京高等師範学校に合格。親友の美川(勝地涼さん)と共に、汽車に乗って東京へ出発します。兄は鼻水を垂らして泣き、母(宮崎美子さん)は父の写真を持って、祖母(大方斐紗子さん)はノボリをはためかせ、家族総出で見送りました。
2人は真っ赤な毛布、通称「赤ゲット」を肩にかけ、お上りさん丸出し。美川が“冒険世界”という雑誌を見つけて興奮、四三は天狗倶楽部の記事を見て「東京には天狗がおっとか?」と驚きます。
寄宿舎生活
その天狗倶楽部の三島弥彦(生田斗真さん)は、雑誌のインタビューに答え「僕は一度くらい負けてみたいと思っている」などと、まさに天狗な発言。それもそのはず、元薩摩士族の三島家は、千駄ヶ谷に7000坪の邸宅を構え、亡き父は元警視総監、兄(小澤征悦さん)は横浜銀行頭取、母・和歌子(白石加代子さん)は女西郷と呼ばれる女傑という、名門一家でした。その三島家をモデルに書かれたのが、当時のベストセラー小説「不如帰(ホトトギス)」です。
ようやく東京にたどり着いた2人。美川は気取った標準語で「金栗氏。市電に乗って浅草まで足を伸ばしてみようか」と言い、赤ゲットをかぶったまま浅草にやってきます。気がつくと四三の財布が無くなっていました。市電でスリにやられたのです。このことで、四三は大の電車嫌いになります。
やっと寄宿舎についた2人。舎監は肋木を使ったスウェーデン体操を推し進める鬼教官・永井(杉本哲太さん)でした。「冒険少年」を持っていることを咎められた美川は、とっさに四三に押し付け、四三は罰として肋木にぶら下がります。
授業が始まり、四三は日々の様子を手紙に書いて、家族に送ります。入学式で憧れの嘉納治五郎に会えたこと、冷水浴を続けていること等…。家族には格好いいことを書きましたが、実際には方言を教師にからかわれ、熊本が恋しくなっていました。
里帰り
夏休み、四三は里帰りします。川で冷水を浴びて「ヒャー」と声を上げていると、春野スヤ(綾瀬はるかさん)がやってきました。「元気そうで!東京はどぎゃん?」とスヤが聞くと、四三は「あーー、どぎゃんかねー。あ、思ったより坂が多かね」と、とぼけます。
四三は国家を歌ったときに笑われたのが悔しく、こっそり練習しているのだと、自転車節を歌い始めました。
~会いたかばってん 会われんたい たった一目でよかばってん
あの山一丁 越すとしゃが 彦しゃんのおらず 村ばってん
今朝も今朝とで 田のくろで 好かん男に口説かれて
ほんに彦しゃのおわすなら こぎゃん腹も立つみゃあばってん
千代八千代 どうしたもんじゃろかい~
スヤはきれいな声で、四三は音の外れたしゃがれ声で、一緒に歌いました。
四三は家に戻って仏壇に手を合わせます。天井には兄が書いた、嘉納治五郎の座右の銘「順道制勝」が貼ってありました。わいわいと夕食を囲むなか、母は春野スヤが女学校を卒業したら見合いをするのだと世間話をします。次の日、四三は畑を耕しながらスヤのことを思い出していました。
夏休みはあっと間に終わり、美川と一緒に再び東京へ。するとスヤが自転車で列車を追いかけてきました。「四三さん、お達者でー!自転車節ば、歌ってねー!」と、見送りに来てくれたのです。2度目の東京への出発、家族からの見送りはありませんでしたが、スヤからのかわいらしい見送りがありました。
マラソンとの出会い
再び品川駅に降り立つと、美川は「寄宿舎に帰るにはまだ早いな」と、また浅草に寄り道。不如帰の映画を見ます。この時代の映画は白黒で無声、弁士の解説がありました。
偶然にも同じ映画を、三島家の母・和歌子と女中のシマ(杉咲花さん)が見に来ていました。不如帰に出てくる姑は和歌子がモデルで、嫁をいびる場面になると、シマはあちゃーという顔に。内容を知らなかった和歌子は憤慨します。
四三は人混みをかき分けながら「東京はどこへいっても人が多かね。スリやひったくりもおるし、物も高かし、熊本に比べたら…」と愚痴ると、美川がいきなり「そんなに熊本がいいんなら、熊本に帰ったらいい!」と、怒鳴ります。
人混みの向こうでは、天狗倶楽部主催の長距離レース「全国学生大競争大会」が始まろうとしていました。「TNG!TNG!」と、人々が盛り上がります。
美川は「春野スヤさんがおる熊本に帰ったらいいよ!僕はうんざりだね。ぎゃん田舎で、レンコンの穴から阿蘇ば眺めて、レンコンの穴に辛子ば詰めて。レンコンの穴から世界ば見えんばい!」と早口でまくしたてました。
そして三島弥彦がスタートの鉄砲を鳴らし、男たちが一斉に走り出します。四三は美川とはぐれ、走り抜ける男たちの群れに巻き込まれました。これが、四三とマラソンの出会いでした。走ることは移動手段にすぎなかった四三の心に、静かに火がつきます。
美川はこっそり吉原に行き、小梅(橋本愛さん)の部屋で一線を超すか否か、逡巡していました。結局、寄宿舎の門限を破り、肋木にぶら下がる罰を受けます。四三は肋木にぶら下がる美川の足の向こうに「マラソン大会」の張り紙を見つけ、胸が高まりました。
そこで志ん生の語りが。レンコンの穴から世界は見えないけれど「肋木の間から、世界が見えたようでございます」と落ちがついたのです。
次回、第4回「小便小僧」。いよいよ走り出した四三。
四三は陸上部に入り、本格的にマラソンに取り組みます。のめり込むあまり、無茶な練習を始める四三…。
そして第1回のオリンピック予選につながっていくようです。
志ん生の次回の落ちも楽しみですね!
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