ここ10年で認知度が大きく上がった「発達障害」。
近年、統計上はその人数は右肩上がりに増えていますが、発達障害者の人が増えたわけではありません。これまで、発達障害だと認識されてこなかった人が多数いるのです。
かつて発達障害の度合いが軽い子供は、“個性の強い子”という見方で過ぎていたケースが多く、医師の診察を受けることなく大人になったため、「大人の発達障害」が増えているのです。
認知度が上がった最近でも、発達障害は名前に「障害」が入っていることから、“診断がつく=障害者扱いになる”という思いを抱き、受診を控える親御さんもいます。我が子を障害者扱いしたくない気持ちは当然です。
ですが、低年齢から適切な療育を受けることで、その症状が大きく改善されることが期待できるのです。
言葉の定義
発達障害
文部科学省によるその定義は、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害(PDD)、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」とされています。
広汎性発達障害には、自閉症、アスペルガー症候群・特定不能の広汎性発達障害・小児期崩壊性障害があり、その境目が曖昧で複数の診断がつくことも多いため、現在はその総称として「自閉症スペクトラム(ASD)」と呼んでいます。
療育
「障害のある子供の発達を促し、社会的に自立できるように取り組む治療と教育」を、療育といいます。この言葉は広く使われていて、医療行為を含まないこともあります。
そしてこの概念を更に広げたものが「発達支援」という言葉です。
療育の内容
対象となる子供
身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)の3種類の障害のある18歳以下お子さんが対象です。
療育の種類
- 発達支援など公費で受けられる公的な療育。放課後デイサービスなど。
- 主治医の判断で医療機関で行われる療育。作業療法(ST)言語リハビリ(OT)理学療法(PT)など。
- 私費で受ける療育
の3種類があります。
1.と2.を受けるには自治体から発行される「受給者証」が必要です。受給者証があれば自己負担額1割で療育を受けることができます。
受給者証の発行には自治体により医師の診断が必要になりますが、療育手帳や精神障害者福祉手帳は必要ないので、軽度の障害でも申請をすれば療育は受けられます。
3.の私費で受ける療育は高額なため、実際に受けているお子さんは少ないです。
療育の効果
子供
発達障害は脳の機能障害ですから生涯治ることはありません。ですが、その脳の特性により、定型発達の子供にはない能力を持っていることが多々あります。別の言い方をすると、「得意なことと、不得意なことの差が大きい。」ということです。
よって療育を受けることによって、不得意なコミュニケーションや身辺自立を伸ばし、得意なことをどんどん伸ばす。ということができるのです。
親
療育を受けることは親にとってもたくさんのメリットがあります。
専門家のアドバイスを受けることによって子供への理解を深め、日常生活でどう接すると成長を促すことができるのかを学ぶことができます。
また療育者は良き相談相手になってくれますから、心配事や悩み事を抱え込むことなく、お母さんも心穏やかに日々を過ごすことができます。
早期療育の大切さ
子供の気持ち
その特性を周りに理解されないことで、大人に叱られたりお友達にいじわるされたりすることもある発達障害。親の認識不足によっては、自己肯定感(自分が大切にされていると実感すること)や自信が育まれないことにもつながります。
わかってもらえないストレスから自傷行為(自分を傷つける行為)などの二次障害へつながることもありますから、お母さんが少しでも疑問に感じることがあれば、療育を検討することは大切です。
始める時期
医療機関では3歳前後から始めます。放課後デイサービスは就学時から受け入れているところが多いです。
医療機関は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といった専門家がいます。どの訓練が必要でいつから始めると良いかなどは専門家でないと判断できません。
3歳より小さくても早くから医師の定期的な診察を受けることによって、療育が必要かどうかの判断と、適切なタイミングで療育を始めることができるのです。
最後に
医師の診察や療育を受けることは発達障害と決定づけることではありません。
万が一、障害があった時、早期療育は必ず必要になりますから、その万が一に備えることです。
医療機関というと敷居が高いように感じますが、子供の成長を促す行為として専門機関を利用することは、たとえ障害がなかったとしても、子供のため、子供の将来のために無駄になることは一切ありません。
我が子にとって一番良い環境を整えるために、療育というひとつの選択を持ちましょう。