幼い子供が甘えてくる姿は、胸がキュンキュンするほど可愛いらしいものです。でもだんだんと成長するにつれ、甘やかしてばかりではいけない場面も増えてきます。例えば抱っこをせがまれたら、どうしますか?
愛情や安心感を求めているのだから抱っこして「甘えさせ」てあげる。それとも、求められるがままに抱き上げるのは「甘やかし」すぎだから抱っこしない。どちらが良いのでしょう?
「甘えさせ」なのか「甘やかし」なのかを判断することは難しいように思うかもしれませんが、全く違うものなのでその違いを知ればわかります。しっかりと区別をして子供に接することで、子供の心を健やかに育てることができます。
ここでは3歳~6歳くらいの乳幼児の「甘え」について、どう対応すると良いのかをまとめたいと思います。
「甘え」とは
子供の気持ち
- 自尊心を満たしたい。
- 自分を認めてほしい。
- 自分の存在価値を確認したい。
このような気持ちから子供は甘えたがります。それは愛情を求める行為であり、受け入れられることで愛されていることを実感できます。そして自分の要求を言葉や態度で表して、それを受け入れてもらうという経験を積むことが、子供の様々な心の成長を促します。
ママやパパの気持ち
- 愛おしいと思う。
- 自分の存在価値を確認できる。
一方ママやパパの方も、甘えられることで可愛いという思いが強くなり、求められる喜びを感じます。そうして信頼関係は深くなり、子供との絆が強くなります。
甘えることで育つ心
子供は自分の要求が満たされると、愛されていると実感します。その体験をたくさん重ねていくことで、自己固定感や自信を持つことができます。そしてママやパパの喜ぶ顔を見たいと思ってチャレンジしたり頑張ったりすることができます。また人を愛するということも知っていきます。
その後大人に近づくにつれ、スムーズに自立心が芽生えてきます。そして円滑な人間関係を築き、愛情深い大人になっていきます。ですから「甘えること」は、幼い子供にとって必要不可欠なことなのです。
大人社会では「甘えている」という言葉はネガティブに使われることが多いのでマイナスイメージがありますが、子供にとっては心が成長するために欠かせない大切な栄養素なのです。
ここで言う大切な栄養素である「甘え」とは、「甘えさせ」のことです。「甘やかし」は逆に心の成長に良くない影響があります。それではその違いを見てみましょう。
「甘えさせ」と「甘やかし」の違い
「甘えさせ」
愛情を求める情緒的欲求です。たとえば以下のような子供の言動です。
- 赤ちゃんのように抱っこをせがむ。
- 今すぐ絵本を読んでと我が儘を言う。
- 少し転んだだけで大泣きする。
これらはすべて、ママやパパの愛情を確認したい行動ですから、そのすべてに応えるのは大変ですが可能な限り応えてあげてください。すぐに応えられないときは理由を伝えて、少し後でも良いので要求を満たしてあげましょう。
「甘やかし」
対価を求める物質的欲求です。たとえば以下のようなママやパパの言動です。
- 店で見かけた玩具を欲しがったら、買ってあげる。
- お腹が空いたとおやつをせがんだら、与える。
これらはママやパパも良くなことだとわかっていると思います。でも外出先で駄々をこねられると周囲の視線が気になり、つい子供の要求に応えてしまいます。でもそれは大人の都合であって子供には関係ありません。子供は一度許されたことはその後も当然許されることとして要求するようになります。そして、昨日は買ってくれたのに何で今日はダメなの?となります。
- 上手く履けない靴を履かせてやる。
これは時間がない時はつい手を出してしまいますが、子供から「やって。」と言わない限り見守りましょう。子供が自分でできることを先回りしてやってあげるのは「甘やかし」です。
一方、「やって。」と言われて手伝うのは「甘えさせ」になります。自分でできることをあえてやって欲しがるのは、愛情を求める行為です。
「やって。」と言われる前にやってあげるのが「甘やかし」。言われてから手伝うのが「甘えさせ」です。
ワンポイントアドバイス
見極め方
子供の要求は一日の中で無数にありますから、その中には「甘えさせ」になるのか「甘やかし」になるのかを見極めるのが難しいこともあります。
例えばある日の夕食時、いつもは自分の子供椅子で食事をするのに、その日はママの膝の上で食べたがった。その時ママは、食事のマナーを守らせるために自分の椅子に座るように言いました。膝の上に座らせるのは「甘やかし」になると考えたからです。
でも振り返ると、その日は昼食に外食していて、お店に子供椅子がなかったためにママの膝の上で食べました。それがとても嬉しかったのかもしれません。
こんな時はしばらくソファで抱っこしてあげましょう。そして甘えたい要求が満たされたら、自分の椅子に座らせて食事をしましょう。
でもこんな風に思い通りに進まないのが、育児の現実です。いくらソファで抱っこしても、やっぱり膝の上に座りたがるかもしれません。その子はその日、ママの気づかない所で寂しい思いをしていて、家に帰ったらずっとママのそばにいたい。という思いがあるのかもしれません。そんな時に無理に子供椅子に座らされたら、「自分を受け入れてもらえない。」と感じて悲しくなるかもしれません。
ですからその時の子供の様子を見て、「甘えさせ」になるのか「甘やかし」になるのかの判断に迷ったときは、要求を受け入れてあげてください。
膝の上に座って食べるなんて大人になるまで続くことは絶対にありませんから、「今日だけ特別ね。」ということが稀にあっても大丈夫です。何事も、基本のルールはあっても例外はありますよね。
何歳まで甘えさせていいのか
「甘え」は自分の要求を表現する「自己表出」という行為であり、心の成長には欠かせません。そこから人との関わり方や道徳、物事の善悪を学んでいきます。
ですから乳幼児だけでなく、個人差がありますが10歳ごろまでの幼少期の間は十分に甘えることが必要です。
成長とは、ずっと上り坂を登り続けるわけではありません。赤ちゃん返りをしたり、自信を失ったり挫折をしたりすることもあります。そんな時はたっぷりと甘えることで立ち直ることができます。そういったことを繰り返しながら少しずつ成長していきます。そしていつか甘えなくなる時がきます。それまでの間はその子が望む形で、愛されていると実感できるように甘えさせてください。
最後に
甘えさせてもらえなかった子供は、人を大切にしたり信用することができずに問題行動を起こします。少年院にいる子供の多くは、幼少期の愛情不足を指摘されています。
また過剰に甘やかされて育った子供は、「ありがとう」や「ごめんなさい」が言えません。自分の言動に責任が持てず問題を自分で解決せずに人のせいにします。
これを読んでいるママやパパは、我が子をとても大切にしていらっしゃることと思います。可愛い我が子の笑顔だけを見ていたいですし、してやれることはなんでもやってやりたいと思いますね。それは愛情の賜物であり、お子さんは幸せです。
ですから「甘やかす」役はおじいちゃんとおばあちゃんに譲って、「甘えさせる」役に徹してください。子供はママとパパに甘えることが一番嬉しいんですから。